「NVIDIAのCEOが来日。ジャパンAI元年。国がAIに1兆円。……で、それが福井の大野に、何か関係あるの?」

先週のニュースを見て、そう流した方は多いはずです。1兆円も、NVIDIAも、たしかに遠い世界の話に聞こえます。ただ、この一連の発表には、小さな会社にこそ関係のある読みどころが一つあります。国と大企業が口を揃えて、「AIの勝負を決めるのは現場のデータだ」と言い始めたことです。

先週、東京で何が起きたのか

起きたことは、大きく三つです。

  • 7月15日から17日、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOが来日し、「今週はジャパンAIの幕開けの週になる」と宣言しました(Bloomberg
  • 経済産業省が、ロボットや工場で動くAI(フィジカルAI)の国産基盤モデル開発に、初年度だけで約3,873億円、2030年度までに総額約1兆円規模を投じる国家事業を始めました。担い手は、ソニーグループ・ソフトバンク・NEC・ホンダが設立した新会社Noetraと産業技術総合研究所です(経済産業省日刊工業新聞
  • ソフトバンク・ソニー・ホンダなど44社の連合が、日本の製造業のデータで独自のAIを育てる事業を発足。大阪には2028年稼働予定の「国家AIファクトリー」も建設されます(NVIDIA公式ブログCNBC

しかも、この顔ぶれは東京だけではありません。NVIDIAが提携先として名を挙げた村田製作所は、本社こそ京都ですが、グループ国内最大の生産拠点は越前市の福井村田製作所です。同じく提携先の信越化学工業も、武生工場で電気自動車のモーターに使うレアアース磁石を作っていて、この6月には福井県内にレアアースの製錬設備を新設する投資(少なくとも350億円)も報じられました(ニュースイッチ)。福井の製造業は、この物語の部外者ではありません。

とはいえ、規模も顔ぶれも大企業の世界です。ここだけ見れば「関係ない」で正解です。

いちばん大事なのは、金額ではなく役割分担

このニュースで見るべきは、1兆円という金額ではなく、誰が何を担当するかです。計算基盤とチップはNVIDIA。基盤モデルは国産連合。では日本側の勝ち筋はどこに残るかというと、報道で繰り返されているのは「現場のデータ」と「実装」でした。日本経済新聞の連載には「唯一の勝ち筋は工場内に」という見出しが付いています(日経)。

AIの頭脳はアメリカからやってきます。でも、そのAIを賢くする材料は、現場の段取り、機械のクセ、お客さんごとの判断で、それは日本の現場にしかありません。そしてAIの価値は、最後に現場へ実装した人のところに落ちます

「それは大手の工場の話でしょう」と思われるかもしれません。ただ、この構図に会社の規模は関係ありません。受注の流れ、お客さんとのやりとり、値付けの勘。大野の会社の現場にも、GoogleもNVIDIAも持っていないデータが毎日たまっています。

国のAIが降りてくるのを待つか、いま始めるか

国家事業の計画では、基盤モデルの初版が約2年後、AIファクトリーの稼働が2028年です。小さな会社でも使えるパッケージになって届くのは、どうしてもその後になります。

待つのも一つの選択です。ただ、いまのAIでできることが、すでに現場レベルまで降りてきています。私は福井で、小さな会社や個人事業主の方とのAI研修・勉強会を、2026年だけで120回(7月時点)やってきました。製造業の現場では、受注や納期の一覧を現場のスマホで見られる画面にする、といった実装もしています。国の1兆円と比べたら桁がいくつも違う話ですが、やっていることの構図は同じです。現場の情報をデータにして、現場に返す。

フアンCEOは滞在中、「日本には技術があるのに、実装で他国に先行されるリスクがある」という趣旨の警告も残していきました(Yahoo!ニュース エキスパート)。国に向けた言葉ですが、私には、小さな会社にもそのまま当てはまる話に聞こえます。ツールはすでに目の前にあります。差がつくのは、トップが「AIありき」で現場のワークフローを組み直す投資を、決められるかどうかです

国家戦略を語れる立場ではありません。ただ、地方の小さな現場にAIを入れる実装なら、毎日やっています。

こんな方へ

  • 大きなAIのニュースを見るたび「やらなきゃ」と思いつつ、流してしまっている
  • 大企業の事例ばかりで、自分の規模で何ができるのかが見えない
  • 現場が忙しくて、AIはいつも後回しになっている

一つでも当てはまる方は、一度ご相談ください。国の1兆円を待たなくても、あなたの現場のワークフローをどこから組み直すか、一緒に設計します。

出典・参考