補助金という言葉に、書類の山と、自分とは関係のない世界を思い浮かべていませんか。AIの導入を手伝っていると、「こういうのって、補助金は使えないんですか」とよく聞かれます。調べてみると、福井には小さな会社向けの制度が、思っているより揃っています。
先に、ひとつ断っておきます。申請するのは事業者自身です。私が代わりに書類を出すわけではありません。この記事は、どこに何があるかの地図です。2026年7月時点の情報で、福井の個人事業主〜スタッフ数名の会社が、AI・デジタルの導入に使える補助金を整理します。読み終わったら、自分の会社がどれに合いそうか、どの窓口に聞けばいいかが分かる状態を目指します。
まず、全体像から
補助金は「お金の出どころ」で、県・国・市の3つに分かれています。目的から見ると、AIを仕事に入れるなら県のチャレンジか国のデジタル化・AI導入、ホームページやSNSで発信を強くするなら持続化、従業員の研修なら人材開発支援助成金、という並びです。まずは全体像から見てください。
小さい会社ほど、補助率は高い
図を見て気づくのは、小規模事業者ほど補助率が高いことです。たとえば県のDX加速化補助金は、中小企業の2分の1に対して、小規模事業者は3分の2。100万円の導入なら、66万円を持ってもらえる計算になります。理由まで言い切ることはできませんが、多くの制度で、規模が小さいほど補助率は高く設定されています。「小さいから関係ない」は、少なくとも制度の作りとは逆を向いた思い込みなんです。
県・国・市、それぞれの中身
| 出どころ | 制度 | 補助率・上限 | 何に使う |
|---|---|---|---|
| 県 | ふくいデジタル導入チャレンジ | 1/2・50万円 | 初めてのデジタル・生成AI導入 |
| 県 | ふくいDX加速化 | 1/2〜2/3・400万円 | 本格的なDX(来年度向け) |
| 国 | デジタル化・AI導入補助金2026 | 1/2・450万円 | ソフト・クラウドの導入 |
| 国 | 小規模事業者持続化 | 2/3・50万円〜 | HP・広告など発信・販路開拓 |
| 市 | 大野市の各種補助金 | 年度による | 魅力発信・採用HP・研修など |
| 研修 | 人材開発支援助成金 | 費用の一部 | 従業員へのAI研修 |
図だけでは分からない、申請でつまずきやすいところを補います。
県
ふくいデジタル導入チャレンジ補助金は、いま申請できます。県が審査した「デジタルツールカタログ」に載っているツールの導入に使えて、カタログには生成AIのサービスも入っています。ただしChatGPTやClaudeを自由に選べる形ではなく、載っているツールに限られる点は先に知っておいてください。ひとつ注意したいのが対象者で、募集要領は法人を前提にした書き方になっているため、個人事業主が使えるかどうかは、申請の前に事務局へ確かめておくと安心です。
ふくいDX加速化補助金は、県の本命級。上限400万円と規模が大きく、機械装置からクラウドサービスまで対象になります。今年度の募集は6月末で締め切られていますが、書いておくのは来年に備える価値があるからです。この補助金は過去に採択された事業者が審査で減点される仕組みで、つまり初めての会社にチャンスが回りやすい。「うちの何をデジタル化したいか」を今のうちに言葉にしておくと、来年度の募集が出た瞬間に動けます。
国
デジタル化・AI導入補助金2026は、旧・IT導入補助金の後継です。補助額は5万円から450万円まで(対象にする業務の数で上限が変わります)。「IT導入支援事業者」として登録された事業者と組んで申請します。単なる月額契約ではなく、「見積作成の時間を月に何時間減らす」のように、どの業務がどれだけ楽になるかを数字で示すのがコツです。
小規模事業者持続化補助金は、「AI導入」というより販路開拓——売上を伸ばすための取り組みを支える制度です。対象経費にウェブサイト関連費が含まれるので、ホームページのリニューアルや予約システムの導入など、デジタルで売上に効く投資に使えます。ただし令和8年度版では、ホームページ費だけ・広告費だけの単独申請はできず(それぞれ上限30万円)、あくまで新しいお客さんを増やす計画の一部として組む必要があります。申請には商工会議所・商工会の支援と、GビズIDが要ります。
市(大野市の補助金)
見落とされがちなのが、市の制度です。大野市の補助金ページを見ると、地域の魅力発信を後押しする「越前おおの魅力発信支援事業補助金」、研修費や採用ホームページの改修などに使える「中小企業者等人材育成・人材確保事業補助金」、新しいビジネスを支える「結のビジネス実現補助金」などが並んでいます。AIやデジタルそのものの枠というより、発信や人材、出店といった目的の中で、デジタルの費用も対象にできる、という形です。
ひとつ正直に書いておくと、市の制度は、その年ごとに内容も募集の有無も変わります。だから補助率や上限額は、ここにはあえて載せません(古い数字を書くと、かえって迷わせてしまうので)。使えそうなものがあるかは、大野市の産業政策課か、大野商工会議所に直接聞くのが確実です。市町の制度はその市内に事業所がある人だけが対象なので、大野市以外にお住まいなら、福井市・越前市・鯖江市など、自分の市町の窓口が入口になります。
研修を受けさせたいなら、別系統の入口
ここまでは経済産業省や自治体の「補助金」でしたが、従業員にAIやDXの研修を受けさせたいなら、厚生労働省の人材開発支援助成金という別の入口があります。研修にかかる費用の一部と、社員が受講している間の賃金の一部が助成される仕組みで、窓口は福井労働局です。
ひとつ条件があって、これは従業員を対象にした制度です。事業主ひとり、あるいは従業員のいない個人事業主は対象になりません。人を雇っている会社が、社員のスキルを底上げしたいときの選択肢だと覚えておいてください。
選び方は「道具から」ではなく「めんどくさいから」
順番を間違えると失敗します。補助金ありきで「何か良いツールないかな」と探し始めると、導入したのに使わない道具が残るだけです。
先に決めるのは、毎月かならず発生している地味な作業のほうです。日報の集計、経理、請求書、打ち合わせのまとめ。「これが毎月しんどい」が先にあって、それに合う道具を選び、その道具に合う補助金を当てる。この順番なら、採択されてもされなくても、検討した時間が無駄になりません。
審査で実際に見られること
公募要領を何本か読み比べてみると、審査の観点はどの制度もだいたい共通しています。①制度の目的に合っているか ②やり方が効果的か ③終わった後に何が残るか ④新しさがあるか ⑤経費の中身が明瞭か。この5つに、事業計画書の言葉で答えられれば十分です。
コツを2つだけ。ひとつ、「新しさ」は世の中に対する新しさではなく、その制度やあなたの会社にとっての新しさで足ります。大発明を書く必要はありません。ふたつ、分からないところを、それらしい言葉で埋めないこと。交付する側の窓口に電話で聞けば、ちゃんと教えてくれます。審査する側も、制度を正しく使ってほしくて公募しているからです。
申請の前に、共通の注意点
制度は年度で変わります。この記事は2026年7月時点の情報なので、申請前に必ず公式ページか窓口で最新を確認してください。そのうえで、ほぼどの制度にも共通する落とし穴が3つあります。ひとつ、交付が決まる前に契約・発注・支払いをしてしまうと対象外になること。ふたつ、既存事業の単なる継続には使えないこと。みっつ、同じ経費を複数の補助金に重ねられないこと。買い物や制作の発注をする前に、商工会議所か県のDX支援窓口に一度相談するのが、いちばん安全です。
最後に、正直なところ
これだけの制度が、県・国・市・商工会議所と、ばらばらの窓口に分かれています。自分に関係するものを調べて、一つにまとめるだけでも、けっこうな手間です。
ありがたい話ではあります。私たちが払った税金が、時代の流れに合わせて、こうしてAIやデジタルの後押しに再分配されているわけですから。ただ、経営者としては、もう一つの見方も持っておきたいと思っています。補助金をあてにする前に、自社の余剰利益をAIに再投資する、という発想です。
補助金は、募集の時期も枠も相手任せです。でも自分の利益からの投資なら、思い立った時に、自分の判断で、すぐ動けます。この意思決定の速さは、小さい会社のいちばんの武器です。補助金は、使えるなら使えばいい。けれど「補助金が出たら考える」ではなく、「まず自分で一歩を決めて、使える制度があれば乗せる」。その順番のほうが、たぶんうまくいきます。
こんな方へ
福井県内で、ひとり〜数名で事業をしていて、AIやデジタルの導入を「お金がかかるから」で止めている方。まず「毎月の何がめんどくさいか」を一つ決めるところからです。それが決まれば、合う道具と補助金は後からついてきます。
何から手をつけるか、自分の会社に置きかえて考えてみたい方は、私が開催しているAI活用勉強会に来てみてください。実際の仕事を持ち込んで、その場で一緒に手を動かす場です。補助金の話も、使えそうなものがあれば、そこで一緒に整理できます。
この記事は「福井の社長のためのAI活用ガイド」の一本です。「何から始める?」「研修はどう選ぶ?」といったほかのギモンも、入口ページからたどれます。