「AIって、うちみたいな会社には関係ないよね」研修や相談で、いちばん最初に聞くのがこの言葉です。パソコンが得意なわけでもない、専任の担当者もいない、毎日が目の前の仕事で手いっぱい。そういう会社ほど、この一言で止まっています。

でも、順番が逆なんです。アナログな会社ほど、AIは効きます。この記事は、何から始めればいいか分からなくて結局そのまま、という方のために、今日ふみ出せる「最初の一歩」を、私が勉強会でいつも話している順番でまとめました。むずかしい道具選びやセキュリティ設定の話は、後回しでかまいません。読み終わったら、明日の朝いちばんに何をすればいいかが、一つだけ決まっている状態を目指します。

組織でAIを活用する際のざっくりロードマップ。最新のAIでできること・敵ではないことを知る→目の前の面倒なことを手伝ってもらう→便利なツール・スタッフの一員のような実感を得る→様々な命令の仕方を学び自社に取り入れる→先手経営から逆算した効率化を現場でも、の5段階を階段で示した図
始め方といっても、一気に全部ではありません。全体はこんな段階で、今日ふみ出すのは、いちばん下の一段だけです

そもそも、うちの仕事に関係あるの?

あります。しかも、ハイテクな会社より、地味な繰り返し作業が多い会社のほうが効きます。

AIが得意なのは、華々しい発明ではありません。毎月かならず出てくる、決まりきっていて、でも地味に時間を食う作業です。日報の集計、請求書づくり、打ち合わせのまとめ、同じような問い合わせへの返信、たまっていくエクセルの整理。「これ、誰がやっても同じなんだけど、やらないと回らない」——その手の仕事ほど、AIの土俵です。

だから「うちはアナログだから」は、関係ない理由ではなく、むしろ効きしろが大きい理由なんです。まだ手作業で回している分だけ、ラクになる余地が残っている、ということですから。

AIは「道具」じゃなく、「部下が一人増える」と思うといい

もう一つ、最初につまずくのが「使いこなさなきゃ」という気負いです。新しいアプリの操作を覚える、みたいなイメージで身構えてしまう。

そこで、とらえ方を変えてみてください。AIは、覚えて操作する道具というより、指示すれば動いてくれる、新しい部下が一人増えたような感覚に近いです。しかも、そこそこ物知りで、文句も言わず、夜中でも働く。

部下に仕事を頼むとき、完璧な指示書は書きませんよね。「これ、ざっとまとめといて」でいい。分かってなさそうなら「ここ、もうちょっとこうして」と直せばいい。AIも同じで、話しかけて、返ってきたものを直していく。この「育てる」感覚さえ持てれば、操作を覚える必要はほとんどありません。

AIが得意なこと(書類作成・ルールやマニュアル作り・計画と検証・数値管理)と、そのぶん人に返ってくること(日頃の面倒な業務が軽くなる・9割ほどの出力で日常がこなせる・さらなる効率化もできる)を対比した図
AIが引き受けてくれる仕事と、そのぶん人に返ってくること。全部を自分で抱えなくてよくなります

最初の一歩は、道具選びじゃない

「じゃあ、どのAIを使えばいいの?」——ここで道具から入ると、たいてい失敗します。あれもこれも比べているうちに、結局始まらない。あるいは契約だけして、使わないまま放置する。

先に決めるのは、道具ではありません。自分の仕事の、どれが毎月めんどくさいかです。日報の集計なのか、見積書づくりなのか、SNSの文章なのか。一つでいいので、「これが毎月しんどい」を先に決める。道具は、それに合わせて後から選べば十分です。

順番はいつもこうです。めんどくさい仕事を決める → それをAIに手伝わせてみる → 合う道具が分かる。この順なら、遠回りになりません。

具体的に、こうやって始める

決まったら、あとは動くだけです。最初はこの3つで十分です。

  • ステップ1:ChatGPTの無料版を開く。まずは無料でかまいません。アプリを入れて、アカウントを作る。ここまでは、スマホで写真を撮ってSNSに登録できる人なら、誰でもできます。
  • ステップ2:いつもの仕事を、丸ごと話しかける。きれいな指示文は要りません。「毎月、現場ごとの日報を集計して一覧にしてるんだけど、これを楽にしたい。どうすればいい?」——このくらい、雑談みたいに投げてOKです。写真やエクセルを、そのまま見せてしまってもいい。
  • ステップ3:返ってきたら、遠慮なく直す。「もっと短く」「表にして」「福井の人に伝わる言葉で」。一発で完璧を狙わず、やりとりで近づけます。この往復こそが、AIの本領です。

たったこれだけです。特別な準備も、高い契約も、この段階では要りません。

つまずくのは、たいてい、この2つ

やってみて手が止まるとしたら、原因はほぼ2つに絞れます。

一つ目は、完璧な指示を書こうとして、書けなくて止まる。「AIには正しいプロンプトを入れないと」と身構えてしまうパターンです。さっきの部下の話を思い出してください。最初はざっくりでいい。足りなければ直せばいいんです。

二つ目は、一回試してイマイチで、それきりやめてしまう。最初の返事が的外れなのは、あなたの頼み方が悪いのではなく、AIがまだあなたの状況を知らないだけです。「そうじゃなくて、こういうことなんだ」と一往復するだけで、精度はぐっと上がります。人に仕事を頼むときと、まったく同じです。

「時間がない」会社ほど、先にやったほうがいい

正直に言うと、いちばん多い先延ばしの理由は「忙しくて、それどころじゃない」です。気持ちは、痛いほど分かります。

でも、ここだけは言わせてください。時間がない会社ほど、先に手をつけたほうがいい。忙しさは、たいてい地味な繰り返し作業から生まれています。そこを一つでもAIに渡せれば、その先ずっと、毎月の時間が返ってきます。「落ち着いたらやる」の落ち着く日は、たぶん来ません。

そして、これは小さい会社の特権です。大きな組織なら、稟議も、システム部門の許可も要る。でもあなたは、思い立った今日、自分の判断で試せます。この意思決定の速さこそ、小さい会社がAIの時代にいちばん強い理由です。世の中はもう動いています。「うちには関係ない」で降りてしまうには、少しもったいない場所に、私たちは立っています。

こんな方へ

福井県内で、ひとり〜数名で事業をしていて、AIを「むずかしそう」「うちには関係なさそう」で止めている方。まずやることは、たった一つです。今月、いちばんめんどくさかった仕事を、一つ思い出す。それが決まれば、道具も、始め方も、後からついてきます。

一人でやってみて手が止まったら、私が開催しているAI活用勉強会に来てみてください。いつもの仕事をそのまま持ち込んで、その場で一緒に手を動かす場です。「うちの場合、何から?」の答えを、あなたの実際の仕事で見つけて帰れます。

導入にお金がかかりそうで踏み出せない、という方は、福井のAI導入に使える補助金の歩き方もあわせてどうぞ。ただ順番としては、補助金より先に「めんどくさい仕事を一つ決める」が、やっぱり最初です。


この記事は「福井の社長のためのAI活用ガイド」の一本です。「どのAIを選ぶ?」「補助金は使える?」といったほかのギモンも、入口ページからたどれます。