「あまりにもデータ量が多いので、エクセル化がしたい」
セミナーの事前アンケートで、小売業の方からいただいた声です。レシート、納品書、売上のメモ、手書きの管理ノート。数字は毎日生まれているのに、紙のままだから集計できない。かといって、手で打ち直す時間はない。「また今夜も打ち込みか・・・」——この転記の時間が、小さな会社のいちばん地味な残業です。
紙の山は、写真に撮ってAIに写させる。人は、確認に回る。特別な機械も、スキャナーもいりません。この記事は、福井の現場で実際に回っているデータ化の第一歩を、例と一緒にまとめました。読み終わったら、手元のどの紙から試すかが一つ決まっている状態を目指します。
流れを1枚にすると、こんな感じです。
やり方は「撮る・頼む・確かめる」の3手
- スマホで紙を撮る。斜めでも、多少の影があっても読めます
- 写真をAIに渡して頼む——「この表をExcelにして。列は日付・品名・金額で」
- 出てきた表を、元の紙と見比べて確かめる
コツは2手目にあります。列を決めるのは、人の仕事です。「いい感じにまとめて」と丸投げすると、毎回ちがう形の表が出てきて、あとで合体できません。「日付・品名・金額の3列で」と先に決めてから渡す。大量のデータほど、最初に列を決めることが効いてきます。
3手とコツをまとめると、こうなります。
福井の現場で、実際にこう回っています
私が伴走している会社で動いている例を3つ。
- ある飲食店では、現金のレシートとカード決済の明細を月ごとにまとめて、AIに渡せる形にそろえるところから始めました。いまは月の売上と経費を突き合わせて、「どこにいくら残ったか」を図で見るところまで進んでいます(飲食店さんの研修の記録)
- 設備工事の会社では、手書きの人工(にんく)管理ノートをスマホで撮って、1か月分の集計Excelに変えました。ノートの書き方はそのまま、集計だけがAIの仕事になりました(この会社の研修の記録)
- 私自身も、勉強会のあとの手書きメモは写真に撮って読ませて、そのまま記録や報告書の素材にしています。清書という工程は、私の仕事から消えました
データにすると、「ズレ」が見えてくる
転記が消えるのは、目に見える効果です。ただ、現場でいちばん効いたのは別のところでした。先ほどの飲食店でレシートと明細をデータにそろえたとき、帳簿の数字と、実際の紙から拾った実額が大きく食い違っていることが見つかったんです。
紙のままだと、数字は「ある」だけで、見比べられません。1枚のExcelにそろうと並べて見られるようになって、「あれ?」に気づけるようになります。データ化のいちばんの価値は、数字の違和感に気づける状態になることです。ズレは悪い知らせではなく、早く見つかるほど手当ても軽く済みます。
図にすると、この違いです。
読み間違いはあります。だから人が確かめる
AIの読み取りはかなり正確になりましたが、それでも間違えます。かすれた文字、手書きの癖、桁の多い数字。出てきた表は必ず元の紙と見比べて、せめて件数と合計だけは確かめてください。AIが出したものは、いつも「たたき台」。ここは資料づくりでもデータ化でも同じです。
あわせて、お客様の名前や個人情報をどこまで入れるかの線引きは、先に決めておいてください。考え方は会社の情報をAIに入れて大丈夫?にまとめてあります。
毎月の紙は、「同じ型」に流し込む
一度きりの表なら、ここまでで十分です。月末のレシートの束、毎日の日報のように、毎月・毎週くり返す紙なら、もう一歩。最初に作った表を型にして、「先月と同じ列で」と頼めるようにします。先ほどの飲食店でも、「来月からは同じ型に流し込むだけ」の状態づくりを進めています。
型を一度教えて使い回す考え方は、スライドの記事で書いたものと同じです。資料も、データも、AIとの仕事は「型を一度作って、あとは流す」に行き着きます。
まずは、いちばん薄い束から
いきなり1年分の箱を持ち出すと、確認だけで疲れて止まります。今日のおすすめは、手元のいちばん薄い束——今週のレシート10枚、直近1週間分の日報——を撮って、「この内容を表にして。列は◯◯で」と頼んでみることです。10枚がきれいな表になる体験が先にあると、山のほうも「これは任せられるな」に変わります。
始め方は、この3歩です。
自分の会社の伝票やノートで試したい、どの紙から手を付けるか一緒に決めてほしい、という方は、AI勉強会でも個別でもお受けしています。紙1枚から、いっしょに始めましょう。
AIの始め方・選び方などの基本は、「福井の社長のためのAI活用ガイド」にまとまっています。